これから古文書解読の学習を始めてみたい人に最適の入門書。
あることがきっかけで、「古文書」を読む(解読する)ことに興味を覚えたのが、
2年半ほど前。
「古文書」…? そう、あの、にょろにょろクネクネした筆文字で書かれた
昔の書状とか書物とか。
各地の歴史資料館や博物館のガラスケースの中に収まってるのを目にしても、
頭から読めないものと決めつけてずっとスルーしてきた私が、
どういう風の吹き回しか、今では古文書の世界にどっぷり…!?
自分でもどうしたことかと思うぐらいの嵌まりようなのですが、
最初は基礎知識もほとんど無し、身近に古文書に精通しているような
人物も見当たらず。
「読みたい!読めるようになりたい!」という思いはあるものの、
何からどう手をつけていったらよいのか、まるで雲を掴むような状態。
あれこれ調べていくうちに、通信講座で学べることもわかったのですが、
いきなりお高い受講料を払って教材を取り寄せるのもなんだかなぁ…
としばらく躊躇っているときに出逢ったのが、この本でした。
まさに、救いの神…。
本書は、全くの初心者に向けて書かれた古文書の入門書。
これを読んで、「こりゃ全く歯が立ちませんねぇ。」とか、
「思ったほどワクワクしないなぁ。」なんてことになったら、
その時点で古文書とはご縁がなかったということで…。
と、まぁ、自分が古文書の世界に足を踏み入れていいかどうかの
判断を委ねるような気持ちで読み始めてみました。
結果は…一読後すぐに通信講座の申し込みを済ませたほど、
古文書解読の面白さに一気に引き込まれてしまったわけでして。
(お陰様で、時々サボりながらも、今でもちゃんと続いております。)
現在は、中級程度の文章でも何とかボチボチ読めるようになった私ですが、
今回ブログで記事を書くにあたり、もう一度全体を読み返してみたところ、
改めて本書に教わることも多く、もっと基本を大事に日々精進しなければ…
との思いを新たにした次第です。
本書は、近畿地方のとある村に残っていた江戸時代の文書のひとつを
テキストにして、それを読み解いていく講義形式で書かれています。
実際の講義録のように書かれた文体は、やさしい話し言葉であるため、
非常に分かりやすく、読み物としての面白さも抜群です。
手取り足取り、痒いところに手の届くような懇切丁寧な説明と、
メリハリの効いた解説は、本当に初心者向きの入門書として
これ以上のものはないのではないかと思うほど。
著者の油井宏子さんは、各地で古文書解読の講座も行っており、
ちょうど1年前に広島市の書店で開催されたイベントで、
私も受講する機会を得たのですが、
これがまた非常に面白くて分かりやすくて最高でした。
最初から最後まで飽きさせること無く、グイグイと引っ張って行くその話の巧みなこと!
適度な緊張感の中、頭をフル回転させながら受けた2時間の講座の
中身の濃かったこと!
(中学校教諭の経歴もお持ちのようですが、こんな素晴らしい先生の授業を
受けることができた生徒は幸せだと思います。)
これからも講座などの催しがあれば是非参加してみたいのですが、
こちらの地方ではなかなか機会がないみたいなのが本当に残念…。
本書が初心者向きとして優れている点はいくつもあるのですが、
まず挙げられるのは、テキストの古文書の文字が大きくて読みやすいことですね。
古文書解読の諸書籍は、小さな文字で、しかも薄ボンヤリした写真で
原文が載っていることがままあるのですが、
自分で拡大コピーをしなきゃ読めないなど、何かと面倒くさいことも多いのです。
でも、本書はこれ一冊あれば他に何も必要としないため、
楽に読み通していくことができるし、くずし字の筆跡も辿りやすく、
本当に親切なつくりになっています。
内容面では、多くの古文書に頻出する文字の解説(くずし方のパターン及び用例)や
言い回しはもちろんのこと、
・時制に関する知識
「暮れ六つ」とか「丑三つ」の意味もスッキリ!
・名前の読み
江戸時代の文書によく出てくる人名(男性)の見分け方がバッチリ!など、初心者が躓いたり戸惑ったりしがちな事柄についても、じっくりページを割いて
解説してくれています。
テキスト自体は、古文書がスラスラと読める人なら、
全文を読み通すのにものの数分もあれば十分という短いものなのですが、
その中に古文書解読の基礎となるべき多くの要素が入っており、
また、当時の人々の生活の一端を想像させる内容が興味深く、
題材の選択が本当に上手いなぁと感心してしまいます。
現在では、本書を始め、古文書の解読について分かりやすく指南してくださる本が
どんどん出て来ていて、ありがたい世の中だなぁ…とつくづく思います。
(欲しい本がたくさんあるのも困ったものですが…。汗)
224ページ
A5判
2012年 初読
2015年5月29日~31日 再読
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